学校科目「地学」関連学会連絡協議会報告とSGEPSSでの取り組みについて

 本協議会では発足以降、各参加学会が学会の簡単な紹介と学会が今までどのように 地学教育と普及に関する取り組みを行ってきたかについて、報告を行ってきた。前回 の会報(153号)での報告以降、幾つかの学会の報告がなされた。

 気象学会は会員数が 4113人で、その内、大学と公的研究機関に勤めている人 が 534人で 気象庁の職員が 1536人。気象教育に関する取り組みとしては、 機関誌 「天気」を発行し、また教育と普及委員会を設け、理科教員、一般の人、最 近では気象予報士試験受験者を対象として年一回3日間の夏季大学の企画と運営を行 っている。 更に高校卒業程度のレベルを対象として教養普及書『教養の気象学』を 1980年に出版し、今年度中に全面改訂の予定である。しかし、年2回の大会講演 会での気象教育に関する発表は数件ずつと少ない。また最近「天気」に載った気象教 育を専門とする気象学会の会員による「物理教育の危機と気象の教育」という論文の 内容が紹介された。この論文では、気象の教育には (1)気象の専門家養成のための 教育と、(2)一般の常識をつけるための教育があり、(1)では地学教育は必要なく物 理教育さえしっかりしていれば良い。しかし物理教育も危機に瀕していることが問題 である。一方、(2)では、これまでの小学校、中学校、高校での教育は専門家のため の知識をやさしく教えようとしていた。しかし、それには物理の理解が必要で無理が あった。そこで、他の地学の科目と異なり、気象の情報は一般的にあふれていて生活 に密着し全ての人が影響を受けるという特徴がある点を利用して教育していった方が 良いという意見が述べられている。また、この論文の最後では、今後どうすべきかと いう点について、理科嫌いをなくす最善の方法は成績をつけることをやめることであ り、迷信などに惑わされない科学的な態度が身につけばそれで十分である。世の中に は学習すべきもの、学習すれば心が豊かになるものはたくさんあるが、それらをすべ て学校で教えなければならないとしたら、学校は地獄になるが、大人になってから本 やテレビで勉強すれば間に合うものまで無理に学校で教える必要はない。しかし、物 理は、十分な理解を得るための実験も含めて学校でないと効果的な学習は困難である という意見が述べられている。また、この論文とは離れて、理科教育の危機は自然を 味気ないものにしているのが原因であって、導入の仕方によっては、嫌いにさせず、 自然に興味を持たせることができ、単に抽象的な概念を教えるのではないということ が指摘された。しかし、気象学会では、こういう問題を議論する機会がないというこ とも報告された。

 鉱物学会からも、抽象概念を教えるのは難しいため、低学年では具体的なことを教 えた方が良く、小学生、中学生には具体的な物を見せた方が良い。博物館が人気があ るのはそのためであるという意見が出された。また、地学を履修しても将来、大学等 で地学を専門として食べていけるのは10%位の人で、90%の人間は地学は生活知 として利用するだけである。更に、鉱物学会の大勢の人の意見としては、生徒には鉱 物を見せ、現象論から入っていくのが良いという報告がなされた。これに対して、鉱 物を見せるということは、その名前を試験として課することにつながるのではないか という意見が出され、そもそも初等、中等教育の目標は何であったかということを認 識する必要があるとの意見が出された。また、地学というのは、星の名前や鉱物の名 前を教えるのではなく、面白い現象を教えるものである。特に身近にあって面白い現 象を教えることが必要で、将来、専門で食べていける10%の人が体系的に考えれば 良く、他の人は体系的に考える必要はないという意見も出された。

 古生物学会は地質学会を母体として生まれ、1957年に地質学会から独立した。 会員数は995人で、その内、 大学勤務が309人で、 博物館等勤務が89人、更 に、企業の研究員、学校の先生、アマチュア等から構成される。学会として学校教育 での地学教育の活動はないが、普及活動は行ってきた。年一回、普及のための例会を 行い、特に博物館の活動を盛り上げている。また、古生物学会が中心となって、生物 系の学会等29の学会の参加による自然史学会連合を1995年に創立し、毎年普及 講演会を実施している。1996年の秋には、自然史教育のシンポジウム・普及講演 会の開催を決定している。更に、一般向けの「古生物と地球の環境」というような普 及書を出版してきた。10年位前に「化石友の会」を学会内に創設し、非専門家を組 織し和文誌「化石」を学会員と共に友の会の会員に配布している。友の会の会員数は 300人前後で会員になるのに資格はない。また、古生物学を学びたいと希望してい る生徒を対象として、どの大学のどの研究室に行ったら、どういう研究ができるかを 説明した全国古生物学研究室案内を計画中であるとの報告がなされた。

 最後に、中央教育審議会からは、今後、環境教育と情報教育に重きを置くという意 見が出されているが、環境教育の"環境"は地学的な要素がどこまで入った環境なのか 明らかでないという意見が述べられた。

 SGEPSS関連の事項については、前回の会報(153号)で報告したように、最近の高 校の教科書ではかなり詳細に取り上げられている。しかし、極論としては、初等・中 等教育の目標が考えさせることにあるのならば、SGEPSS関連の事項に限らず、ほとん どの地学の内容は、本当に生活に関わる基本的な事項を除いて、初等・中等教育では 教える必要はないという考えもある。あるいは、上記の他学会報告にあるように、詰 め込み教育にするのは、試験や入試のために暗記をさせるからであって、試験や入試 の対象から外してしまえば、自然の豊かさを教える地学程、魅力に富んだ科目もない という考えもある。運営委員会では、 秋季学会(第100会総会・講演会)で高校、 中学校の教科書でSGEPSS関連の事項の教えられている内容をポスターに展示する予定 である。初等・中等教育でのSGEPSS関連の事項の教育の現状を知るためにも是非見て もらいたい。

(広報担当運営委員)