このたび国際交流事業の補助 金によって、平成8年7月22日から27日にかけてオーストラリアのBrisbaneで行わ れた1996 WPGM (Western Pacific Geophysics Meeting)に参加させていただきま した。今回のWPGMはSEDI (Study of the Earth's Deep Interiors) 5th International Symposiumとジョイントしており、地球磁場逆転の研究を進めている私としては、 ぜひとも参加したい学会でした。 学会はBrisbaneの市内を蛇行して流れるBrisbane 川沿いにあるBrisbane Convention Centerで行われました。Convention Center は非常に大きく、全面ガラス張りの正面玄関から入ると3階まで吹き抜けのホー ルになっており、セッションはここの2階と3階の各部屋に分かれて行われました。 Convention Centerの属するSouth Bank Parklandは市民の憩の場となっており、 レストラン、アイススケートリンク、博物館、美術館等が有機的につながれてお り、散歩をしていても気持ちのいいものでした。また、夜になると橋や川縁がラ イトアップされて、観光船が通過したりするのを川沿いのレストランから眺める のは素晴しいものでした。
今回、私は『地磁気ダイナモに与えるマントルの影 響』というセッションで『セレベス海・スル海(ODP Leg 124)から得られたブル ネ/松山境界の地球磁場のふるまい』というタイトルでポスター発表を行いまし た。ODP Leg 124の古地磁気データについて今まで解析を行ってきましたが、今 回は3つの掘削孔から得られたブルネ/松山境界の地球磁場逆転記録からコンポ ジットカーブの生成を試み、酸素同位体比と帯磁率の対比による年代軸を入れま した。最も注目すべき特徴は、逆転の400年前と800年後にそれぞれ短いエクスカ ーションがあることと、逆転の前後に相対磁場強度が安定磁極期よりも弱く見か けの古地磁気極の緯度が60度前後の準安定状態がそれぞれ1000年と3000年程度の 間続くことです。時間軸にわずかのずれはありますが、北大西洋のHole 609Bか ら得られたブルネ/松山境界の記録(Clement&Kent, 1986)にも同様の特徴が見ら れます。
地球磁場逆転時における地球磁場変動のタイムスケールにはダイナモ 問題を扱っている研究者も興味をもっているらしく、極性逆転をする地磁気ダイ ナモのシミュレーションに成功したGlatzmeier博士達もポスターを見に来られま した。その他、ニュージーランドでブルネ/松山境界の研究をされたことのあるTurner 博士は逆転前後の特徴に興味をもたれて、ニュージーランドのデータをもう一度 見直してみたいとの考えを示されました。過去数百万年の火山岩と堆積岩の地磁 気永年変化データをまとめられたConstable博士も、逆転前後の準安定状態には 興味を持っておられるようでした。
本学会で一番興味を引かれた発表は、ダイ ナモのセッションでGlatzmeier博士が示した地球磁場逆転のシミュレーション結 果のビデオでした。コンピューターグラフィックで描かれた磁力線の中を通り抜 ける様は、ダイナモ理論に詳しくない私にも実感の湧くものでした。なかでも、 内核内部のきれいに並んだ磁力線が印象的でした。彼は、地球の内核に関する予 想なるものもリストにして示しましたが、内核の地磁気ダイナモに果たす役割が 重要であると認識しているようです。これに関連しますが、Song博士達は地震波 を用いた研究によって、内核がマントルに対して1年に1度の割合で回転を行って いるという発表を行いました(これは最近Natureに発表されました)。
その他 にも、擬似単磁区粒子の残留磁化/岩石磁気パラメータからみた氷期・間氷期サ イクルの記録/岩石磁気学とその応用などのセッションで興味深い発表をいくつ か聞くことができました。これらを聞いて思ったことは、堆積残留磁化から地球 磁場を復元すること、岩石磁気パラメータから気候変動を捉えること、共に様々 な要因があって非常に難しいということでした。今回の自分の発表では堆積物に よる様々な影響を十分に考慮することができませんでしたが、さらに考察を進め てより精密な地球磁場変動の復元を試みたいと思っています。
WPGMといえば、1990年に金沢で行われた第1回のミーティングで、 国際学会で初めての研究発表を行 ったことを思い起こします。自分としては、今回のBrisbaneでの発表は金沢から 始まった一連の研究の1つの節目だったような気がしています。このような貴重 な機会を与えて下さった方々に感謝をすると同時に、今後も多くの若手研究者の 人々が本事業によって有意義な時間をもたれることを期待いたします。