学校科目「地学」関連学会連絡協議会報告

前回の会報での報告以降、2回の協議会があり、三つの学会から 地学の教育と普及の取り組みについての報告があった。協議会の内 容は次の通りである。

(1) 第7回協議会報告
岩石鉱物鉱床学会は岩石学、鉱物学、鉱床 学等の諸科学の発展と普及を目的として、1928年に設立された。会 員数は943人でその内、大学教官が346人で小、中、高校の教諭は9.5 %を占める。アマチュア(マニア)は会員の中にはいなく、今まで地 学教育や普及に関する取り組みはしてこなかった。最近では秋の学 会は鉱物学会や資源地質学会と連合で学会を行なっており、その中 で普及講演を行っている。春の学会は単独で行なっている。1929年 に月刊誌として『岩鉱(Journal of Mineralogy, Petrology and Economic Geology)』が創刊され現在に至っている。『岩鉱』には、外国か らの投稿も多く、日本国内で発行されている固体地球科学分野の雑 誌の中でも、国際的に引用される度合の最も高い雑誌の一つとなっ ている。 以上の学会報告の他に最近の地学をめぐる話題について 議論がなされた。まず理科については現在、小学校の1、2年の生活 科から教えられているが、小学校の1、2年の生活科は社会+理科と いうより社会的な現象を見ながら理科を感じていくもので、理科は 小学校3年から始まると考えた方がいい。地学を含む総合理科につ いては、先生自身が専門化しているため、総合理科を教えられる先 生があまりいない。理科離れは小学校低学年から起こっているとい う意見もあるが、特に中学校に入ると受験の影響で偏差値が効いて くるために点数に換算されにくい理科は人気がなくなり理科離れが 始まるという現実もある。多くの高校では地学は選択しないが、こ れは今のシステムでは地学をとってもメリットがないためで、地学 の普及のためには少しでも生徒が地学をとれるようにすることが必 要である。また現場の教師は忙しいので地学で詳しく教えるべき所 をわかり安くして欲しいという意見もあった。 また都道府県別に よる地学の履修率の紹介があり、都道府県によってかなり地学の履 修率にバラツキがあり最も高い県では20%程度だが、最も低い県で は1、2%しかないことが報告された。低い県では地学の教員を採用 し続けなかったのが原因である。 地学の教え方については、物理 や化学の体系立った考えにあてはめようとするよりも、例えば歴史 的に物語的に教え、この世界がいかに面白いものかアピールする方 がいいという意見もあった。一般に、日常生活で経験している物は 理解し安いので感覚的に教えることが大切であるという意見もあっ た。更に地学の目的は自分の視点でなく広い視野から自分をその中 に置いて見れるようにすることであり、そのことさえ理解させれば、 こまごまとしたことは教える必要はないという意見もあった。 更 に最近の地学をめぐる話題については、全く根拠のない話ではなく、 地学がなくなるという話さえあるということが報告された。また議 長の方から、色々な所で地学についての議論をすると最後は決まっ て大学入試の問題になってしまい、大学入試を変えなければどうし ようもないという絶望的な雰囲気になってしまうという報告があっ た。地学をめぐる状況を変えるためには、教育系の学会が動くより、 研究系の学会が動く方が効果があるという指摘もあった。

(2) 第8回協議会報告
惑星科学会と地震学会から地学の教育と普 及についての報告があった。 惑星科学会は天文と地球科学の中間 領域を開拓する学会で、1992年に創立され、1996年現在500名強の 会員がいて約4分の1が学生会員である。学会の目的は日本の惑星探 査を支えて、惑星科学の成果を社会に還元したり、中、高校生など 若い人材を惑星科学に勧誘するための広報活動を行うことである。 具体的には、学会年会の時に一般向け講演会 を開催したり、若手 研究者の会(夏の学校)のサポートをしている。また学会誌『遊星人 』を年に4回発行している。しかし、初等、中等教育について積極 的に関わるだけの体力はまだなく、学校教師の会員参加は天文系や 地質系に比較すると少ない。一般向け講演会としては、1996年の例 ではポスター等で高校などに宣伝して若い人への宣伝に努めたが参 加者124名で高校生はあまり多くなかった。今後、学会誌を充実さ せ教育関係の記事を取り入れたり、ホームページの形で宣伝してい きたい。現在、学会から会員への連絡手段としてはニュースレター を電子メイルで流しているが、すべての会員が電子メイルを使って いる訳ではなく、どうしても学会員に伝える必要のある物は郵送し ている。学会のホームページは更新しており、ホームページと電子 メイルを使うことによって郵送費用を抑えたいというのが本音であ る。また惑星科学の分野について、アメリカの例では、AGUはあま り一般向けの普及活動をしているとは聞いたことがなく、むしろ民 間のプラネタリー・ソサエティ等が一般向け講演会を開催しており、 昔は故カール・セーガン博士が毎回のように話をしていたとの報告 があった。 ホームページについては幾つかの学会から現状の報告 があった。地団研も昨年ホームページを作ったが、ホームページを 担当する人は大変で、なかなか更新できない。火山学会ではホーム ページは対外向けの広報に利用しており、学会誌の英語のアブスト ラクトだけをのせている。外国からの質問が多いが、中高生からの 質問は少ない。今後、Q&Aのコーナーを設けるのもいいのではと考 えているが、その返事等ボランティアだけではしんどいであろうと の報告があった。またホームページに全部載せてしまうとホームペ ージだけで用が済んでしまい学会にはいる必要がなくなってしまう のではという意見もあった。また普及という観点からは、ホームペ ージより実際に触れ合いのための会合等を開催した方が社会に対し てインパクトが大きいのではないかという意見も出た。 地震学会 は1880年横浜地震を契機として設立され、その後解散の後、1929年 に現地震学会が創立された。地震学のみならず、固体惑星地球物理 学、地震工学、その他周辺分野の研究者、学生等からなる。会員数2、 322名でその内大学関係が4割、学生会員は342名、学校教育、社会 教育関係者 は100名強である。学会の目的は基礎的なことを含む地 震及び地球内部に関連する研究とそれらに関する知識の交換、普及、 ならびに地震災害の軽減、防止に貢献することである。今まで社会 に対する貢献が少なく今充実させている所である。学会の出版物は、 和文のものは『地震』(季刊)と 『日本地震学会ニュースレター』( 隔月刊)で、ニュースレターは10年前からスタートし書評や会員の 声、シンポジウム報告等も入っており、他の学会からも評価が高い。 また英文学術誌 、Jouranal of Physics of the Earthも発行して いる。年2回の定期大会があり、春は合同大会に参加している。普 及活動としては、若手のための『地震学夏の学校』や、秋季大会の 時に一般向け講演会を開いている。最近では、1995年1月の兵庫県 南部地震の発生を契機に、これまで社会に対する貢献が乏しかった ことを反省し、新しい活動を開始しつつある。具体的には、科学技 術庁のお金で、地震予知ではなく地震学の内容を説明した啓蒙ビデ オ『地震はなぜ起こる?ー地震のなぞを探ってみようー』を作り各 道府県の教育委員会を通して中学校に無料配布した。(計8250本で、 全中学数の8割強に配った。)また社会への貢献を考える将来検討委 員会や学会員以外に情報を発信するための広報委員会がスタートし たばかりで学会員以外を対象とする広報誌の編集を始めている。昨 年の8月には高校の先生や高専の先生30数名が集まり2日間の会合を 持ち、ビデオに対する反応等を話し合った。またビデオを作成した 時に、現在の形では学会に著作権がないという事が問題となり、そ の問題から学会全体としての活動を推進して行くには法人化が必要 ということになり、学会を法人化しようという方向で現在進めてい るとの報告があった。 最後に、今後の連絡協議会の方針として何 をやっていくかについて議論が行われ、地学の必要性を社会にアピ ールするなどの案の他、当面は学校教育を対象とするが、将来は社 会教育も対象とする必要がある等の意見が出た。また、教科として 天文も入っているのに『地学』という名前はおかしいという意見も 出て『地学』と言う名前になった歴史的な経過も説明された。SGEPSS の30、40人の会員にもお願いした地学教育学会のアンケートの内容 については次回(4月)の連絡会で地学教育学会から説明があるとの 報告があった。 (前広報担当運営委員)