JGG 編集委員長の交代にあたって


JGG 編集委員長  本蔵義守

 河野前 JGG 編集委員長が突然辞任されることになり、編集委員会 では多少混乱が 生じてしまった。もちろん、この理由は SGEPSS の会長として河野会員が選出された ためであり、辞任自体に問題があるわけではない。私自身も、これまでの JGG 編集 委員会のスタンス からすれば、編集委員長と会長を兼ねることは筋論としては好ま しくないと考えていた。ただし、残りの任期が1年であること、さら に来年から合 同誌に移行しそうな状況であることを考慮すれば、例 外的に兼任が認められてもよ いのではないかとも考えていた。

 ここまでは、一般論及び特殊状況下の例外的措置として検討しておればよかったの であるが、現実に辞任が決まり、後任の選出となるといやな予感がし始めた。ここで も一般論として、委員長の後任 には副委員長があたることは当然であり、多くの編 集委員も同じようにお考えであったはずである。ところが、現副編集委員長の寺沢会 員は来年度の合同大会のプログラム委員長として活躍されること がすでに決まって いた。とくに、アブストラクトの電子化という大変な課題に取り組んでおられ、今年 の後半からは超多忙となることが目に見えていた。

 というような訳で、私におはちが回ってきてしまった。もちろん、 お断りするこ とも可能であったが、持ち前の楽観主義で、「何とかなるだろう」、「誰かがやらな ければならないのだ」と思ってお引き受けすることにした。これまで編集委員は長年 務めてきたが、委員長の任務はやはり重い。残り1年足らずではあるが、JGG の締め くくりをきちんと行なわなければならないとの思いでいっぱいである。

 先日の総会で決まったように、JGG は 1998 年 1 月から合同誌 "Earth, Planets and Space" (EPS) に引き継がれる。これまで合同誌の実現に向け活動してきたもの として、ひとしおの感がある。と 同時に、消え行く JGG (もちろん名称として)に 一抹の寂しさもある。私にとって JGG は、研究そのものであったといっても過言で はない。1969 年に東大地震研究所の力武研究室の大学院生として研究 の道を歩み始 めたが、JGG は常にそばにあった。大学院進学当初は (SGEPSS の前身の日本地球電 気磁気学会に入会する前)、JGG が国内で刊行されていることをまったく知らず、地 震研究所の洋雑誌の書架で捜して見つからず、一体どうなっているのだと思ったこと を想いだす。事務の方に尋ねて、和雑誌の書架におかれていることを知ったとき、こ れは学会誌であったのかと初めて知ったような訳である。このように、私にとっては 、JGG はスタートから International Journal であったのである。

 その後、多くの論文を JGG に投稿してきたし、特集号を企画したりしてきた。力 武研究室の主要な研究課題の一つは、地球内部電磁感応であり、文字どおり Geomagnetism and Geoelectricity である。 Space 関係の方々から JGG という名称を変更 すべきであるという提案がなされるたびに、恐縮しつづけてきたものである。私は名 称変更に反対する訳ではないが、名称変更に際して JGG の抜本的見直しが 必要であ ると考え、単なる名称変更に終わらせてはならないとの考えを持ち続けてきた。この ことが、一部の方々から名称変更慎重論者と受け取られていたかもしれない。JGG と いう名称に個人的愛着はある が、現在の SGEPSS の学会誌としてふさわしい名称と は決して思っていない。

 さて、JGG の抜本的見直しが必要であると考えている理由を説明しよう。大きく2 つある。慢性的財政問題、慢性的論文数不足である。 これらはお互いに無関係では ない。前者について云えば、会員が増えるほど財政状況が悪化するという訳のわから ないことが起こるのである。これが学会誌として健全なはずがない。後者については 、月刊とするには通常の一般投稿論文では数が足りず、半数近くを特集号とし て取 り込むことでしのいできたというのが現状である。ところが、分 野によっては、特 集号に質の高い論文が集まるという効果もあって、 この方式で JGG を維持すること は可能ではある。しかし、これで一 流の International Journal であると云えるだ ろうか。これまで歴 代の編集委員長が会員に論文投稿を促してきたが、抜本的進展 は見られなかった。しかし、よくよく考えればこれは当然で、わずか 700 名程度の 学会で月刊誌を維持すること自体に無理がある。さりとて、 隔月誌では International Journal としては不十分である。

 一方、最近の合同大会の流れや学術会議研連の見直しの動きなどを みれば、あま りにも細分化され、個々の学会の殻に閉じ込められている現状の改革は時間の問題で もあるようにみえる。学会誌とてしかりである。Journal の立場からももう少し強固 な母体が必要で、財政問題という Science 以外の問題点をまずクリアしたい。 Science の問題としても、母体を広げることで質の高い論文がより多く期待できる。 さらに、最も重要なことであるが、惑星探査などのすぐれて Interdisciplinary Scienceへの展望が開ける。確かに、現在の自分 の Research Field に 21 世紀への展望を みる研究者も SGEPPS には 多く、固体地球科学との共存など目障りだと考える会員 も少なくはない。しかし、そういう考えと Interdisciplinary Science の推進とが 競合する訳でもない。また、固体関係の論文は見ないので JGR のように Space Physics とは分けて、できれば別冊にして欲しいという要求もある。 こうした要求にはもっともな面もあるが、 ともかく EPS をまず何とか軌道に載せることが先決であろう。

 最後に、JGR などの既存の Journal で事足りるのに、何故に JGG や EPS が必要 なのかという疑問に対して、以下のような合同誌作業委員会の報告書からの引用でも ってお答えしたい。SGEPSS 会員からの質の高い論文の投稿をお願いして、JGG 及び その後継誌としての EPS 編集委員長としての挨拶にしたい。


 地球惑星科学関連学会による合同大会も定着し、従来の学会の枠を越えた共通セッ ションやシンポジウムがいろいろ企画されて活発な成果発表及び議論が展開されてい る。一方、Lunar A を始めとする惑星ミッションシリーズにおいても、従来の分野の 枠を越えた新しい研究に大きな期待が寄せられている。さらに、「全地球ダイナミク ス」、「海半球プロジェクト」等のこれから動きだす大型プロジェクト、「 GPS 気 象学」のような独創的発想に基づく研究等はいずれも従来の分野の枠を越えた研究計 画である。

 ところが、こうした最近の流れから期待される研究成果の発表については独自の対 応が遅れており、このような研究成果を世界に向け包括的に発表することが、い ろ いろな分野を包括する総合的ジャーナルを持っていないために、必ずしも十分であっ たとは云えないとの認識が高まりつつある。他方、科学は本来的に国境を持たず、一 流と目される既存のジャーナルに投稿することで研究発表は十分であるとの指摘があ ることも事実である。しかし、我が国独自の研究成果を我々自らの評価に基づいた情 報として世界に向け発信することは、独自の新しい発想を産み出す土壌 の形成及び そうした土壌に根ざす科学の創造という観点からも必要なものであると 確信する。 そして、情報発信手段としてのジャーナルを考える際には、我々独自の 評価システ ムを可能とする編集体制を我々の手で構築することが不可欠となる。このような評価 システム、編集体制は普遍的 (科学として) なものでなければならず、 従って、我 々が目指すジャーナルは当然 International なものでなければならない。 また、海 外からの旺盛な投稿も International Journal としての必須の条件であることは云 うまでもなく、そのための環境整備も重要な要素である。