今回の田中館賞は大阪府立茨木高等学校教諭の
中井仁氏に授与されました。
磁気圏尾は、太陽風・惑星間磁場変動の影響下で、刻々と変化しています。中井氏 はこの十数年間磁気圏の人工衛星の磁場データを総合的に解析し、磁気圏尾磁場構造 およびその太陽風・サブストーム変動効果の解明に大きな業績をあ げられました。 これらはいずれも人工衛星の観測で得られた大量のデー タを用い、さまざまなパラ メータの間の統計的関係を導くという比較的地味な 手法を用いた研究です。しかし 、これらの研究から、これまで一般に受け入れられて来た磁気圏変動についての描象 に変更を迫る、いくつかの発見がなされており、国際的にも高い評価を受けております。
今回の授賞対象となった中井氏の研究業績は、主に以下の3つにまとめることがで きます。
(1)オーロラ・オーバルの大きさは太陽風・磁気圏相互作用によって誘起さ れる磁気 圏内大規模プラズマ対流の数時間にわたる変動状態によって決まり、 サブストーム の発生は2次的な効果しか与えないことを示した。これは複数の極軌道衛星によって 観測されたオーロラ・オーバルの大きさの統計的性質から導かれたもので、磁気圏・ 電離圏相互作用が比較的ゆっくりしたタイムスケー ルで変動をしていることを示す 重要な発見です。
(2)磁気圏尾の平均磁場が、主として太陽風の圧力、惑星間空間磁場の南北成分、地 磁気活動度によって、ほぼ等しい割合でコントロールされていることを示した。これ は ISEE1 のデータを用いて磁気圏尾、とくにローブ領域の磁 場の強度がどのよう な量に依存するかを統計的に調べた結果、最終的にはロー ブ領域(RE = 20) の磁場 を、太陽風の動圧、静圧、惑星間磁場の南北成分、オーロラ・ジェット電流強度で表 す実験式を求めることに成功しました。 これは、「中井の実験式」として国際的に 知られております。
(3)磁気中性面での電流ベクトル分布を求め、サブストーム発達時には、近地球尾部 電流が増えることを示した。これも ISEE1 のデータの解析にもとづ くもので、磁 気中性面電流の分布、沿磁力線電流の分布、それらのサブストー ム発生にともなう 変動を明らかにしたものです。
このように、中井氏の業績は大変優れたもので、田中館賞に値するというのが 評 議員会の一致した意見であります。特にこれらの研究が高等学校の教諭と いう、研 究者としては幾分不利な職を持った方によってなされたこ とは、特筆すべきことだ と思います。以上を持ちまして、田中館賞審査報告と いたします。