合同大会、合同誌、および学会連合の今後

河野 長
以下に述べることは、まったく個人的な考えであって、学会の方針などではな い。しかし、こうした問題に関する一般的な議論は、すでに運営委員会レベル では開始されている。学会全体としてもこうした議論が活発になることを期待 して、一つの考え方の例として発表することにした

1990 年から、当初は「3 年程度たったら見直す」という前提で始まった合同 大会は、すでに今年で 8 回を数え、すっかり定着した行事になった。更に来 年からは合同誌が刊行される。ある学問分野の発展を計るためにもうけられて いる学会にとって、研究成果発表のための講演会の開催と論文誌の刊行は、最 も重要な機能であるといって過言ではない。このように学会機能の重要な部分 が、他学会との共同によって実施されるようになった現実の状態は、組織面で もより一層の統合の必要性を示していると思われる。これは慎重な取り組みが 必要な問題であるが、現在ではある種の緊急性も発生しているように思われる。 以下ではこのような統合組織が必要と考えられる理由を概観し、次いで比較的 実現しやすいと思われる統合の方向について試案を述べる。

  1. 学会統合の必要性

    学会は学問の進展をはかるためにある。もし現在のやり方で学問が十分発展す るという見通しがあるなら、組織をいじるようなことに時間を費やすべきでは ないであろう。しかし現実には、地球物理の中で近接した分野に小さな学会が 分立している現実が様々な困難を引き起こしている。合同大会の開催や合同誌 の発行は、これらの困難を乗り越えるためにあみだされた手段であるが、必ず しも完全な解決にはなっていない。組織についても統合を必要としいている原 因を以下にあげるが、これらのうち、(1) -- (3) は主な原因が学会の外にあ るもの、(4) -- (6) は主な原因が学会の中にあるものである。

  2. (1)日本学術会議

    現在地球物理学関連では各学会に対応した地震、測地、火山、気象、海洋、陸 水、地球電磁気の各研連と、これらの代表者から構成される地球物理研連が存 在する。この構成が学問の現実に必ずしも合っていないことは、惑星科学専門 委員会の設置でも示された。物理や天文などはそれぞれ一分野が一研連であり、 他分野からは地学系の研連の多さは異常だと見られている。

    こうした背景に加え、日本学術会議では全体にわたるリストラクチャリングを 検討しており、第 17 期(1997 - 2000 年)の間に地球物理関係研連の見直し を行なうことが確定した。再編成の案としては、固体、流体、超高層の 3 研 連にという考え方もあるようだが、IUGGへの対応という点では1つの研連にま とめる方がわかりやすい。いずれにしても統合が進むことは確実である。

  3. (2)IUGG

    地物研連では 2003 年の IUGG を日本に招致することを決め、その作業のため に各研連からの代表を集めた準備会を作った。しかしこの体制では各研連 (学 会) は様子見をしており、積極的にイニシアティブをとろうとする動きはない。 本当に IUGG を招くなら、そのために主体的に取り組む (臨時のものでない) 組織が必要である。

  4. (3)その他の国際対応

    AGU が隔年に開いている WPGM など、日本の地球物理学会が全体として対応す る方が良い問題は多々あるが、現在のところは各学会が個別に反応している状 況である。

  5. (4)合同大会

    合同大会はすでに 8 回開かれ、学会の枠を越えて学問の成果を発表する場とし てすっかり定着した。しかしこのやり方には次のようないくつかの問題点も内 蔵している。

  6. (a)運営主体

    合同大会連絡会という組織があるが、これは参加も不参加も任意で年により参 加学会が代わることもあるので、学会の運営のやりかたについて統一した意志 を形成しにくい。このことは各学会に固有の要求 (わがまま) を通すことで、 大会における科学の質を下げる方向に働いている可能性がある。一方参加者が 増えて 2000 人を越える規模になっており、例えば SGEPSSの秋季大会などと 違って、開催を引き受けられる機関は極めて限定されてきている。しかし大会 を開く主体となる「学会」がなく、連絡会も実行機関ではないので、LOC に大 会準備を任せる以外に手段がない。

  7. (b) 事務局

    これまでは東工大(というより本蔵義守氏個人)が事務局を引き受けていた。 しかし本蔵さんが JGG(及び合同誌)編集長になったことで、他の機関に事務 局を引き受けて欲しいと要望している。

  8. (5)合同誌

    編集委員会は学会運営とは独立なので特に問題はない。しかし編集事務以外の ことを処理するために何らかの組織が必要であり、このために各学会から委員 が出て「運営委員会」を作っている。しかしこの委員会は ad hoc な性格を免 れず、難しい問題(例えば赤字が出た時の各学会の負担)が発生した時十分機 能を発揮できるという保障はない。

  9. (6)大型プロジェクト

    惑星探査機など、地球物理や関連分野でも 100 億円を越えるプロジェクトも それほど珍しくなくなった。かつては、学会の偉い先生方が直接文部省に働き かけて、あるプロジェクトをスタートさせるというようなこともあったかもし れないが、今やそんな時代ではない。このような大きなプロジェクトの必要性 や、一般の小規模な科学研究との整合性については、広く関連分野内でコンセ ンサスを作っていかなければならない。特に巨額の研究費を要するプロジェク トについては、直接の関連分野ばかりでなく学界一般でも認められるものでな ければ、 tax payer である国民の理解が得られない。現在の分断した個々の 学会では、こうした合意形成の仕組みができていないために、他分野からの要 求と競争する場合不利になることも考えられる。

  10. 実現可能な改革の案

    以上述べたように、地球物理各学会のさらなる統合は、内外から要求されてい ると考えられる。しかし各学会とも既に 50 年程度の歴史を持ち、それぞれの 学会に固有の事情をかかえている。この現状では、性急な統合を叫ぶことはむ しろ学会連合への障害となるばかりである。そこでこの数年間ぐらいのタイム スパンで実現可能と思われるものに限って、統合を進める案を考える。。この 案は、すでに実際に学会が連合してやっている部分を扱うための二階部分を、 各学会が個別にやっている一階の上に作ろうとするものだと総括することがで きる。

  11. (1)学会連合

    各学会の参加を得て学会連合を作るが、その機能は現在各学会が連合して実施 していること、及び共通の基礎となるもののみに限定する。気象、海洋など流 体系の学会が連合に消極的であることを考えると、連合の対象を当面固体と超 高層の分野に限定するのが現実的であろう。すでに各学会が連合して行なって いる業務としては、(1) 合同大会の運営、(2) 合同誌の発行に関する事務、 (3) IUGG など対外対応、がある。共通の基礎としては、(4) 会員事務管理 (名簿、会費納入)、(5) 共通情報誌(EOS に担当)の発行などがあげられる。

    学会連合の会員は参加各学会のいずれかに属するものとする。学会連合の役員 は各学会から選出した者を当てる。学会連合運営に必要な経費は参加各学会が 会員数に応じて納入するものとする。

  12. (2)各学会との関係

    上に述べた共通部分以外は、これまで通り各学会の専管事項である。この中に は (1) 秋季大会の開催、(2) 情報誌(固有)の発行、(3) 邦文又は欧文の論 文誌(合同誌以外)の発行、(4) その他の活動など、これまでの学会活動は全 て含まれる。

  13. (3)これからの進め方

    合同誌の問題の場合と同様に、各学会から代表を出してワーキンググループを 作り、実現可能性の検討を進めるのが現実的であろう。地震学会では「将来検 討委員会」において、法人化などを含めて今後の学会のあり方を検討している ので、学会の統合という視点を失わないように(一地震学会会員として)会長・ 副会長にも申し入れを行なった。