ところが数年前から長谷川杯は長谷川・永田賞といういかめしい賞に変身してしま いました。本来下戸である私には装いを新 たにした賞はさらに遠い別世界のものだという感じがしておりました。長谷川先生は 私にとっては雲の上の存在で、温顔を遠く から拝するだけでしたが、先生が壇上で話しをされると会場全体がほのぼのと明るく なるような感じをもったものです。これに 対して永田先生は非常に身近な方で、廊下で擦れ違いざまにもご叱責を下さるような 厳しい先生でした。記憶に残っている思い 出もあります。10年以上前のことですが、常磐線の直流化の問題が再燃したことが あります。柿岡に地磁気観測所があるため に常磐線の直流化が妨げられ、電車の運行本数に制約を受けるなど地元は大変な不利 益を被っているということでした。背後に は表に出ない複雑な事情もあったようですが、この問題を討議するために茨城県が懇 談会を組織されました。気象庁、運輸省、 国鉄、地元からは土浦市長その他の方がでられ、私がまとめ役を勤めることになりま した。時の地磁気観測所の河村所長、後に 気象庁長官になられた内田観測部長そのほか当時学会会長の平尾先生など大変苦労さ れました。まとめ役を引き受けたことを永 田先生にお話ししたところ、委員会の委員長というものはただ委員の意見を聞くだけ でなく、自分自身の見解見識をもっていなければ いけないという趣旨の助言を下さいました。 いまでも印象に残っています。このた び長谷川・永田賞を頂くことになると、永田先生の ご叱責の声がいつも身近に聞こえてくるのではないかという感じもします。
考えてみるとこの学会におよそ40年間お世話になっています。右も左もわからな かった若造をとにもかくにも研究者に仕立てて 下さったのはこの学会であります。心から感謝いたします。そのうえ賞まで頂くのは 恐縮です。推薦の労をとって下さった方々、 それをお認め下さった皆様にお礼申しあげます。この学会の特徴はいわゆるソリッド 、アッパーから宇宙線を含む多分野の多彩な人 が集まっておられて、視点が多角的なことです。これらの人々に接して、その明晰な 判断と違った視野には啓発されることが多々 ありました。さらによいことは、何事にも前向きに積極的で、お互いを盛り立ててや っていこうという気風が満ちていることです。 電通大での学会の帰り道たまたま川井直人先生と一緒になり、先生が「他人の足を引 っぱるようなことしては何事も成就しない。 お互い協力してやりましょうや」といわれたのが耳に残っています。良い学会に所属 したと思います。
後ろ向きの話しばかりになってしまいました。会員の皆様が学会初期の若々しい気 風を受け継がれて自由奔放に活躍されること を願っています。