第105回 地球電磁気・地球惑星圏学会総会 会長挨拶

                                               会長 松本 紘

  (内容)

1. 学会活動の活性化と拡大 

2. 目的別ワーキング・グループの必要性

3. 地球科学関連学会の連合・連携と合同誌EPS

4. 学会名

5. 科学研究費など研究経費の問題

6. 合同大会と大会のありかた

7. IUGGと学術会議、WPGM

 

この度会員の皆様方の投票により会長に選出され、第20期の会長をお引き受けすることになりました京都大学の松本 紘です。新運営委員、新評議員の皆さんと共に学会の運営、学会活動に鋭意努力いたしたいと存じます。今期の最初の総会に当たり、一言ご挨拶いたしたく存じます。

学会を取り巻く情勢は、過去のいずれの時代よりも厳しく、かつ急変していることは、会員の皆さんも認識されていることと思います。このような時期には、立ち止まることは後退することに相当すると考えるべきでしょう。したがって、会員の皆さん、運営委員の皆さん、評議員の皆さんのご意見を注意深く聞きながら、迅速に諸々の事態に対応して行きたいと決意を新たにしています。ご協力をお願いいたします。

学会は会員各位が学術研究の成果を持ちより、発表と議論を通して会員の学術的、知的交流をはかる場所であることは論を待たないところです。また、会員相互が総会やその他の機会に親睦を深めあう場でもあるでしょう。そのほか、学会は会員の研究活動・教育活動などに関係する学術環境や学術行政の動向と変化、他学会との関係および連携協力にも責任を持って当たらなければならないでしょう。現在、私たちの学会が抱えている問題は沢山ありますが、いくつかについて情勢を省みていかなる対策と運営を行えば良いのか、私見を述べさせていただき、挨拶の代わりとさせていただきたいと思います。

1. 学会活動の活性化と拡大 

―― 分科会活動への期待 ――

わが学会が、諸先輩によって切り開かれた磁電流・岩石磁気、空中電気、電離層、地磁気など電磁気学を基礎とする比較的小さな学問領域を、固体地球から宇宙空間までの広い領域にわたる今日の活発な研究活動に発展させることができたことは、会員一同の誇りとするところです。しかしながら、私たちの学問領域の発展は学会の年二回の総会に代表される学会活動だけで達成されたわけではありません。先輩会員、現会員は力をあわせ、1950年代後半から、今世紀末の現在まで、半世紀にわたり数々の国際共同プロジェクトに参画し、全国共同利用の文部省直轄研究所や大学付置の研究所、研究センターをつぎつぎと生み出しました。そして、それらが機能し始めてからは、むしろそれらが主催する学術シンポジウム、研究会が創造的な学術交流の場として大きな貢献をしてきたことに注意を払わねばならないでしょう。この点は同種の直轄研究所や共同利用研究機関を有する天文学会、核融合学会などと共通します。

しかし、他方では物理学会や電子情報通信学会などでは事情が異なると見受けられます。後者の場合は会員が総会だけでなく、学会活動の一環としてシンポジウムや分科会形式の研究会を総会とは別に地道に積み上げ、会員相互の利便と交流の場を提供しておられます。そう言った学会の分科会やシンポジウムに私たちの会員諸氏も学際領域からの参加者として招待されたり、あるいは自ら積極的に参加し、貴重な意見・情報交換をされてこられたのではないでしょうか?しかし、逆の交流はどうでしょうか。私たちの学会と関連する他学会の会員が、我々の学会の総会に参加して発表をされることが最近は大変少なくなったように思います。もちろん、春に開催される合同大会では地球科学関連の他学会との接点と交流の機会が増えているという点は大変結構でありますが、私たちの学会は、その特徴である幅広い学問領域であり、地球科学以外に物理学会、応用物理学会、電子情報通信学会、天文学会やプラズマ核融合学会など数多くの接点を持っているはずです。わが学会の発足当初は、これらの他学会からの参加者は少なからず、学際領域の生き生きとした議論がありました。最近は、会員が他学会に出向くものの、残念ながら他学会会員がわが学会総会に参加され、発表されることはきわめて少なくなり、いわゆる「出超」となっています。地球科学関連学会はもちろん、これらの多様な学会からのニューカマーを迎え入れ、学際領域の活性化を図り、もって学会会員の増加にもつながる仕掛けとして、「分科会形式」の学会活動を私は期待します。比較的小人数の研究会を「SGEPSS分科会 ○○研究会」と名打って、他分野の参加者に参加しやすくし、我々学会の研究活動がこれらの異分野の研究者とより多くの接点を持てるよう、会員各位の専門分野で「SGEPSS分科会 ○○研究会」を起し、継続し、会報もしくはSGEPSSのホームページにその活動を報告していただければ、きっと学会の新しい展開の芽となるでしょう。当面は予算的な裏付けは困難かもしれませんが、チャレンジしてくださるよう会員各位のご協力をお願いしたいと思います。

こう言うと、すでに共同利用研究所などで行われている研究会と重複するから無駄だと思われる会員も少なからずおられるでしょう。しかし、共同利用研究所・センターにとっても、所・センターが主催する研究会だけでなく、学会の研究会を通した支持や研究交流が意味を持つような事態に共同利用研究所・センターも直面しつつあると考えていいのではないでしょうか。もちろん、これらの既存の研究所研究会と学会の分科会の共催があってもいいでしょう。学会の役割と存在が外から見えてくれば、きっと良い方向に向かうと確信できます。さらに、現存の共同利用研究機関では覆い切れない新しい研究分野が私たちの分科会活動で生まれる可能性もあると思います。

2. 目的別ワーキング・グループの必要性

学会の運営は時代と共に多岐にわたるようになりました。私が運営委員を務めた10年以上前の頃と比べますと、運営委員会が処理すべき問題や会長が対処すべき問題は、はるかに多くなってきています。評議員会は各賞の推薦や決定を行う他、会長とともに学会を取り巻く情勢、学会の将来など中長期的な問題を主として議論し、会長を通して会員各位、運営委員会と連携しつつ学会のために活動してきました。しかし、冒頭に申し上げましたように、学会を取り巻く状況と情勢は急速に変動を続けています。たとえば、中央省庁再編に伴う学術行政の変化、学術会議の再編問題、科学技術振興策の中での研究予算の多様化、科学研究費の枠組みの流動化、学術情報の電子化、学術再編と学会連携・連合への動き、学会大会のありかたなど、どれをとっても予断を許さないものが多く、学会の迅速な対応のが必要とされるものばかりです。

明らかに、運営委員会だけでは対応しきれるものではありません。幸い、わが学会員は多士済済で、人材に事欠きません。現在の評議員、運営委員以外にも学会運営の経験をお持ちの会員も数多くいらっしゃいます。そこで、以下に述べるような幾つかの学会の直面している問題に対処するために、会長および運営委員会を手助けし、助言と提言をしてもらうために、問題毎に ad hoc なワーキング・グループ(WG)を立ち上げたいと考えます。この提案はすでに運営委員会と評議員会で了承されており、会員各位のご理解とご協力をお願いいたしたいと思います。評議員、運営委員、学会運営経験者、会員各位数名からなるWGを以下の問題に応じて構成し、迅速に提言や議論のためのたたき台をだしていただければ、このめまぐるしく変化する時代に、わが学会が迅速に対応して行けるのではと期待しています。会長から会員各位にWGメンバーとして協力を依頼することになろうかと思いますが、その節にはよろしくお願いいたします。

現在、発足をお願いしたいWGとして、次のようなものを考えています。(1)学会連合WG (2)大会のあり方WG (3)学術会議対応WG (4)科学研究費問題WG (5)将来問題(含:学会名問題)WGなどです。もちろん、これ以外にも必要になればどんどん作れば良いでしょう。また、これらの中には不要になるものもでてくるでしょう。WGの名称、役割などは会員各位のご意見、運営委員会での議論、評議委員会での議論などがまだほとんどなされていません。したがって、試行錯誤に近くなるかもしれませんが、先にも述べましたように「歩きながら考える」というスタイルにしないと急変する外的環境に学会が迅速かつ的確に対応できないことになるだろうと予想しています。ご意見をお寄せ頂ければうれしく思います。

3. 地球科学関連学会の連合・連携と合同誌EPS

河野前会長がSGEPSSを代表してイニシアティブをとりながら、日本地震学会の石田前会長、日本気象学会の松野前理事長とともに、ほかの地球物理学関連学会(日本測地学会、日本火山学会、日本海洋学会、日本水文科学会、水分・水資源学会、日本惑星科学会)に呼びかけ、「地球物理学関連学会 学会長等懇談会」を立ち上げていただきました。私たちの学会のホームページから「学会連合」のページへと進んでいただければ、そこでの議論の議事録がでています。今期も前期に引き続き、上記三学会が世話役を務めることになりました。今年度は学術会議の荒巻会員と測地学研連、地震学研連、地球電磁気研連、気象学研連、海洋物理研連、陸水学研連、惑星科学会専門委員会の代表の出席も頂き、学会合同大会に先駆けて去る6月17日に地球物理学関連学会学会長等懇談会が開かれました。そこでは「関連学会の強い連合」を直ちに目指すのではなく、合同大会の開催やIUGGやWPGMなどの国際会議の共同開催、学術会議の地球科学関連組織の再編など、共通の問題を話し合うために、当面は「連携」を図りながら学会長等懇談会を続けて行く方針が確認されました。河野前会長がイニシアティブをとってこられた「さらなる学会統合へ向けて」への歩みは一歩後退したように聞こえるかもしれませんが、脱落する学会が出ないようにとの配慮からこう進むことになりました。わが学会も学会員各位の意見を集約しながら、「部分連合」もしくは「大連合」もしくは「独自路線」などの路線について充分議論を重ねてゆくべきと思います。

EPSというJGG の伝統に加え、新たに大きく領域を拡大した、地球・惑星科学の日本の中核誌が誕生することになったのは、三期にわたり大家元会長、國分元会長、河野前会長をはじめ、合同誌作業委員会メンバーの努力の賜物であります。JGGを引き継いだ新生「EPS」は本蔵編集長のもとに順調な滑り出しを見たことは会員各位がご承知のとおりです。うれしいことに、昨年度河野前会長名で文部省に申請していた学術誌発行のための科学研究費補助金が、これまでの1000万円弱から3000万円強へと3倍以上に認められたということです。これはEPSが複数の学会の合同誌であること、国際的に認められた実績を有していることが主な理由でしょう。今後は増額された補助金を有効に活かした雑誌の編集が編集長、編集委員会、合同誌運営委員会で進められると確信しています。学会の運営委員会でも、EPSのより良い発展に積極的な提案をしていただくつもりです。

4. 学会名

この問題はいずれ浮上するものと思います。「日本地球電磁気学会」は昭和22年(1947年)に、日本数学物理学会の地球物理学の1セッションが発展して結成されました。時代の変遷と学術の発展に対応するべく私たちの学会は、大議論の末、「日本地球電磁気学会」から現在の「地球電磁気・地球惑星圏学会」へと改名したのは昭和60年(1985年)のことで、もう14年前のことで、小嶋会長のときでした。私たちの学会名に「惑星圏」という名前が入ったのは当時まだ現在の「日本惑星科学会」が存在せず、惑星科学も私たち会員の一つの大きな研究分野として発展すると考えられたからです。現在の学会名の一文字一文字に込められた会員の思いは充分に理解できます。しかし、名前が長すぎて、他の分野の方々にはなかなか馴染んで頂いていないというところが現実でしょう。わが学会の将来は学術の発展の方向にも、学会間の連合などにも影響されますが、当然「学会名」によっても強い影響を受けることが予想されます。会員各位もこの問題を考えていただく時期ではないでしょうか?この問題に対して私は個人的な見解は持っていますが、広く会員各位の議論が巻き起これば、その時点で申し上げたいと思っています。

以上の今回は紙面の都合で4点にしか触れられませんでした。しかし、次の3点の問題も会員各位にとって重要な案件です。以下にごく簡単に触れますが、次回以降の会報に詳しい情勢報告をしたいと思います。

5. 科学研究費など研究経費の問題

この問題は会員の研究遂行にとって真剣に検討すべき問題です。科学研究費については近年しくみが変わり、種類も複雑に変化しています。また、現在学会からは審査員を学術会議へ推薦していますが、審査員の数も変更されます。これまでにも科学研究費の申請、配分などについていくつかの問題が会員の中で個別に議論されてきましたが、一度学会としてじっくり議論してみることが必要かもしれません。

6. 合同大会と大会のありかた

合同大会はこれまで成功を収めてきましたが、LOCに対する負担の増加が著しく、運営の仕方やあり方についていくつかの問題点が「連絡会」のほうで持ち上がっています。私たちの学会もこれまで合同学会の主役の一つとして合同大会の成功に寄与してきたことは誇りと思いますが、固有のセッションがなくなり、懇親会がなくなり、急激な電子化が進み、一部の会員にはそのあり方について再考の余地はないかという声も私の耳に届いています。もちろん、合同大会の基本的なあり方については大部分の会員は賛成しておられるものと思いますが、この問題と秋の大会のありかたも掘り下げてWGで検討してほしいと願っています。

7. IUGGと学術会議、WPGM

IUGGは2003年に日本で開催される公算は高いと期待されています。もし、そう決まれば学術会議、関連学会が力を合わせなければなりません。WPGMはAGUが日本の地球科学関連学会の協力を得て来年の合同大会の時期に一日だけダブらせて連続して開催される方向で「連絡会」のほうで準備が進められています。これらの課題ももいろいろ問題があり、WGで充分な議論を必要とするものと考えています。