太陽フレア (solar flare)

 太陽の活動領域(黒点群など)において,紫外線やX線などの電磁波強度が急上昇し,数分から約1日にわたって継続する現象.水素のHαスペクトル線で観測すると,2本のリボンのように輝く明るい領域が見られる(図1)

 フレアの大きさは,Hα観測によってフレア領域の面積をもとにした指数で表され,最も小さいSクラスのフレアに始まり,小さい方から大きくなる順に1から4までの「重要度」に分類し,更に各階級の間をF,N,Bの3クラスに分ける.通常の太陽活動のレベルでは,重要度が3Bであれば最大級のフレア活動とされる.またGOES衛星によるX線強度観測から,強度が10倍増大する毎に,それぞれC,M,Xクラスのフレアと呼ばれ,強度の対数を用いてX5.5クラスのフレア,といった呼び方がされる.

 フレアは活動領域の上空の磁場に蓄積されたエネルギーが,何らかのきっかけで解放される.現時点において広く認められているフレアのモデルは,正負の異なった極性を有する領域の境界(磁気中性線)の上空に形成される閉じた磁力線の領域において,互いに方向が異なる磁力線が再結合を行うことにより,磁場の持つエネルギーの解放されるというものであるが,エネルギーの蓄積過程や,フレアが何をきっかけに発生するかは良く分かっておらず,太陽物理学における主要な研究課題の一つとなっている.


 フレアによって解放されるエネルギーは,大きいもので約10^27J(ジュール)に達する.ようこう衛星によるX線コロナ画像(図2)を見ると,フレアの発生に伴って強い電波放射が発生することがあり,これを電波バーストと呼ぶ.特に発生周波数が時間とともに次第に変化するII型電波バーストは,コロナ中を伝播する衝撃波によって発生し,適当なコロナ密度の高度分布を仮定して衝撃波の速度が求められ,多くの場合1000-2000 km/secとなる.なお極めて激しいフレアが発生した場合,光球面で核融合反応が発生して白色光でもフレアが観測されることがあり,これを「白色光フレア」と呼ぶ.


 太陽フレアが地球環境に及ぼす影響として有名なものとして,電離層の反射に依存している長・短波通信が一時的に途絶するデリンジャー現象がある.これはフレアが放射する強い紫外線やX線によって,電離層大気の原子や分子の電離が過度に進み,逆に抵抗となって作用することによる.強いフレアが太陽面の西半球で発生した場合,エネルギーが数10MeVー1GeVにわたる太陽高エネルギー粒子(陽子など)がフレア発生後30分くらいで地球に到達し,宇宙飛行士や衛星搭載機器に障害を与える可能性がある.フレアに伴ってCMEや惑星間空間衝撃波が発生することがあり,その影響は非常に早い場合約1日後に,多くの場合は約2日後に地球に現れる.フレアによる影響のうち最も顕著なものは磁気嵐などの地球磁気圏擾乱であり,北海道でも観測されるような高いオーロラ活動は,非常に強い太陽フレアに伴って発生することが多い.人工衛星の障害も,この時期に発生することが多い.フレア活動は,研究だけでなく通信や宇宙関係の実務にとって重要であるため,衛星や地上から常時環視が行われており,インターネットでも公開されている(下記ホームページ参照).


 以上述べたように,太陽フレアに伴って太陽地球系に多くの現象が発生するが,電磁波の放射以外のCMEや惑星間空間衝撃波に関連した現象(磁気嵐など)は,フレアそのものが原因ではなく,「フレアを誘起させるような」CMEがフレアに先行して発生するのだ,という仮説が提唱され,フレアが磁気嵐を起こす,といった従来の考えに疑問が投げかけられている.しかし大規模な磁気嵐は必ず大規模なフレアに伴って発生していることからしても,この問題にはまだ決着が着いていないといえる.

○太陽フレアや関連現象に関する情報が見られるホームページ
http://www.sec.noaa.gov/today.html(米国海洋大気圏庁)
http://hiraiso.crl.go.jp/(郵政省通信総合研究所平磯宇宙環境センター)

 

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