電波星としての地球
地球は、極地方で発生するオーロラの激しい変動に伴って,強力な電波を放射しています。すなわち地球は,宇宙空間に向かって電波を発射する星,電波星なのです。この電波の波長はおよそ1キロメーター程度なので、オーロラに伴って発生するキロメータ波長の電波ということから,「オーロラキロメートル電波」と呼ばれています。周波数で言うと50kHzから400kHzです。図1に科学衛星「あけぼの」がとらえたオーロラキロメートル電波の一例を示します。
図1 あけぼの衛星がとらえたオーロラキロメートル電波。周波数140KHzから400kHzに見られる強い電波放射がオーロラキロメートル電波です。あけぼの衛星が、南半球のオーロラ帯を横切ったときに観測しました。
この電波は、1974年にアメリカのIMP-6衛星が電離層(高度100〜300km)の外に出て発見しました。電波は電離層の外で発射されていて,電離層でさえぎられて地上まで届かないため、それまでは発見されなかったのです。電波の強さは1千万ワットにも達します。発見者のガネット教授は、オーロラの中でも、特に、ディスクリートオーロラというカーテン状の構造のはっきりしたオーロラが現れるときにオーロラキロメートル電波が出ていることをつきとめました。
それ以来、世界各国で、人工衛星やロケットを使ってこの電波の研究が始められました。我が国でも、「じきけん」、「おおぞら」、「あけぼの」という科学衛星を次々と打ち上げ、この電波の詳細な性質を明らかにするとともに、その発生機構について研究を進めてきました。
加速された電子は電波を放射する性質があります。オーロラキロメータ電波は,この原理に基づいて発生していると考えられます。一方,ディスクリートオーロラは,1000ボルトから1万Vの電圧で加速された電子が、地上約100kmの大気に衝突して発光する現象です。ことから,高い電圧で加速された電子が,電波を発射するとともに,オーロラをおこしていることがわかります。では,この1万ボルトの電圧はどこにあるのでしょうか。オーロラキロメートル電波の放射源はまさにこの電圧が発生している場所,電子の加速領域です。その場所はオーロラキロメートル電波の周波数と地球の磁場の分布を使えば知ることが出来ます。研究の結果、高度3000kmから12000kmの領域に電子を加速する加速電場領域が形成されることが判明しました。まさに,自然の中に加速器があることになります。図2にこの加速電場領域の模式図を示します。
図2 オーロラ粒子加速域の模式図。オーロラキロメートル電波は、オーロラ粒子の加速に伴って放射されます。この加速域は、オーロラ帯上空、高度3000kmから12000kmの領域に形成されます。
電子の加速に伴って強力な電波を放射する機構は、現在二つ考えられています。一つは電波が電子のエネルギーを得て増幅され放射されるという機構で、もう一つはこの電子のエネルギーを使ってプラズマ中のたて波の波動(プラズマ波動)が増幅され、これが電波に変換されるという機構です。特に2番目の機構がオーロラキロメートル電波で重要であるということは我国の研究によって明らかにされました。